TOHOシネマズ府中で「犬王」を観てきました。
雑誌「モーニング」に連載中の「ワールドイズダンシング」は世阿弥の物語で、ちょうど世界観が被っているのでちょっとみてみようかな?と思ったら
これはすごい、大変なものを観た。
アニメによるオペラってどんなだ?と興味津々でみた今作。時間も短いしちょっと見てみようと思ったら、しょっぱなからストーリーに飲み込まれるように没頭し、気が付いたら終わっていたのですが、3時間くらいの大作を観た後のように消耗していました。
まずオペラと称しているからには登場人物の歌唱力が高くなければなりませんが、主役の犬王役「アヴちゃん」の声と言ったら!男性か女性かわからないようなゆらぎ、歌唱の技術、音域の広さ。こんな人いるのね。
対する森山未來のこちらはストレートにハートに響く力強い歌。同じフレーズを何回も何回も繰り返して段々盛り上げていくシーンは相撲の仕切りにも似て、徐々に興奮を高めていきます。
ストーリーもまるで民話のように始まり、狂乱の後狂乱にふさわしい終わりを迎えるのが残酷でありまた美しくもあります。
クラシックが趣味だというと「気取ってる」とか「堅苦しい」とか色々言われることも多いのですが、リストはロックスターのようにキャーキャー言われて失神する女性もいたとか、その時代のアイドルだったりするわけですから、300年前のポップスを聴いてるだけでヨシキを聴くのとどこが違うん?と「そうね~スノッブだよね~」と言いつつ脳内で反論しています。
お能だって世阿弥の時代ではみんなバイブス全開で観ていたと思うので、この「犬王」を観ると誇張表現はあるとしても当時の人の興奮が今の私たちと違わないことがわかるし、改めてお能を観るきっかけになればいいなと思います。私も観よう。