散歩好き

井の頭公園で犬とまったり。

バイス

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TOHOシネマズ渋谷で「バイス」を観てきました。世の中はGW10連休真っ盛りでアベンジャーズはもう予約画面真っ黒と言う時に、割と空いてる…と思ったのは予約の時だけ。行ってみたら満席でした。連休に映画を観る方、必ず予約を取るようにね。

1960年台半ば。大学は素行不良成績不振で追い出され電気工として働くディックは、飲んだくれの喧嘩っ早いロクでなし。しっかり者で優等生の高校の時の同級生だった妻にどつかれ一念発起した彼が、30年後副大統領ディック・チェイニーになるとは…

ウチのダンナもまあまあのロクでなしでしたから(お義母さんが亡くなった今だから言える)、人間やる気になりゃあなんだってできるとは思いますが映画的な演出を加味してもこれはすごい。天降ってるからスーパーリッチだし。やっぱ女房は戦友たるべしでしょうか。

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足をテーブルにあげるのって、テキサスっぽいですよねえ。男権主義の象徴っぽい。

ロクでなしのダンナに「私は女だから一流大学には成績良くても入学できないし、大統領にもなれない‼️だからあんたがなるのよ‼️」と絶叫する妻リニーにひたすらうなずくのみ。マクベスよろしくふたりで権力の座を駆け上がっていく姿は爽快に感じてしまいます。ディックが歳をとり心臓が持たず瀕死の状態になった時リニーが「ディック・チェイニー[E:#x2757]️」と鼓舞すると「…今度はさすがにママの言うとおりにはならないようだよ…」と言うシーンは2人のスタンスを端的に表していました。

さて、この映画は政治的内容でありながらコメディとして秀逸でして、ブラックやそうでないユーモアでもって私達シロートにもわかりやすくかつ眠くならないよう仕上げてあります。よく日本では政治的内容のお笑いはウケないと言われ、実際ぶっつけでやったお笑いの方が干されたりとなかなか難しいようですが、それは当然です。時事ネタや政治ネタで人を笑わせるのは高度な技。豊富な知識と分析が存在して初めてイジって成功するものであって、ハンパなお笑いは文字通り「笑えない」のですよ。そこに政治的圧力がー、とか日本人の笑いと政治は相容れない、とか日本人は政治的なお笑いを受け入れる素地がない、とか言うのはまっったくのナンセンスです。だったらあの時代に「忠臣蔵」とか存在しないっちゅうんだよ、べらぼうめ。

と言いつつも、お笑い側の高度な技を理解し得ない民度というのもどうかと思いますがね。例えば江戸時代に落語を聴いてて、これは有名な和歌の話だね、と聞き手がわからないと笑うことが出来ないし、現在この映画のあるシーンで「あ、マクベスだ」と知ってないと面白さ感じないですもんねー。作り手と聴き手、お互いに勉強はいつも必要ということですな。

クリスチャン・べールの変わりようばかり取り沙汰されていますが、彼は演技で世界を作る天才だ。気がついたら彼がクリスチャン・ベールだという事を忘れています。そして脇を固める俳優さん達もまたすごい。本物みたいだけどモノマネショーになってないの。さすがです。ぜひぜひ劇場で命を削って演技するクリスチャンを観てください。(あんまり痩せたら太ったりで身体にすっごい負担がかかっちゃったからもうこういうのやめるんですって。)