散歩好き

井の頭公園で犬とまったり。

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン

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TOHOシネマズ新宿で「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」を観てきました。

kotfm-movie.jp

上映時間なんと3時間20分、インターミッション無し‼️嘘やろ。これだけで観るかどうか悩む人がいると思いますが、オランダやドイツでインターミッションを入れたところ配給元のアップルが怒っちゃったそうで、余程アップルの方々は大きな膀胱をお持ちなのでしょう。でもまあわかりますよ、これは一気に観なければ、川をぶった斬って溢れさすみたいな感じになりますからね…

1920年代、オクラハマに住むネイティブアメリカン、オセージ族の土地から出た石油により莫大な富を得たオセージ族の人々が利権争いに巻き込まれ次々に殺害された事件を元にした小説が原作です。

こういう、いわゆる私たちがイメージする西部劇…白人が悪者のインディアン(と敢えて書きます)と戦って正義は勝つ‼️的なテンプレではなく、史実に基づきネイティブ・アメリカンの人々が犠牲になったり戦ったりする作品を「修正主義的西部劇」というのだそうです。「ダンス・ウィズ・ザ・ウルブス」とか。意味なくネイティブ・アメリカンの方々を恐ろしい存在として書いたりする白人側からのみの視点からの作品はそろそろ終わりを告げるようです。

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主人公アーネスト(デュカプリオ)の妻、モリー。演じるリリー・グラッドストーンは気高く、賢く、美しいオセージ族の女性をごく自然に演じていて、圧倒されます。ほぼ無名の彼女が大御所デ・ニーロやデュカプリオ相手に一歩も引かない、しかし決してオーバーではないすばらしい演技を観るだけでこの映画を観た甲斐があると言えます。


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私たちのあまり知ることのない、豊かなオセージ族の暮らしぶりも興味深い。ちなみに山岸凉子著「ブラックスワン」に登場するアメリカンバレエシアターのプリマ、マリア・トールチーフはオセージ族出身です。


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デュカプリオ、なんだかマーロン・ブランドに寄せてきてる❓


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この映画で1番好きな嵐のシーン。

伯父の戦略に乗せられ財産目当てで近づいたアーネストだったが、圧倒的な知性と豊かな体験に基づくゆとりに完敗し、族の教えを受ける。一緒に嵐の音を聴き、静かに自然への畏怖の念を感じる2人にあのような未来が待っていようとは…いや、想像に難くないのか。

単純なアーネストはたしかに妻を愛していた。しかし伯父の精神的支配は妻の教えよりずっと強く、疑いを持っていても伯父の指示に逆らうことができない。弱く、単純で、人任せの彼は妻の生きる姿勢とは対照的だ。でも、モリーの方が得難い人物なのであって、アーネストの方がただ普通の人間なのかもしれない。

3時間20分、どこか削れば2時間半ほどになってそっちの方がみんな観やすいんじゃないの❓と観る前は思っていましたが、観た後はどこを削れるのかさっぱりわからないのです。

ただひたすらに淡々と静かに物語を積み上げていき、最期の夫婦の対決の(というにはアーネストがあまりにも哀れだ)瞬間に向かって大きく流れていく物語は、わかっていない男とわかっていても愛さずにいられなかった女の悲しくて壮大なドラマでした。

膀胱に自信のない方は配信で、そのほかの方はぜひ映画館で観ていただきたいです。