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ヒトラーVSピカソ 奪われた名画のゆくえ

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アップリンク吉祥寺で「ヒトラーVSピカソ 奪われた名画のゆくえ」を観てきました。今日のシアター5は初めてでした。席数30ほどで、試写会に招待された関係者気分が味わえます。しかし10人程度の観客で1時間半ほどしかないこの映画の上映中、4人のおじいちゃんがトイレ休憩(❓)に出たり入ったり。歳を重ねるとは大変な事だなあと。

ナチスユダヤ人から奪い取った美術品で現在も行方不明になっているものは10万点を数えるほどであるが、これらはどうやってナチスの手に渡ったのか。

まるでヒトラーピカソがガチで戦ったような題名ですが、全然違うので誤解のないように。

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ヒトラーは広く知られているように若い頃は画家志望で、その影響か美術品収集における情熱はただ事ではなく、故郷リンツに「総統美術館」を設立すべく党を挙げて美術品を収奪し収蔵品を増やしていきました。

この美術品を戦時中あるいは終戦後に取り戻そうとする人々を描いたのが「ミケランジェロプロジェクト」や「黄金のアデーレ」といった映画です。実際私もブルージュの聖母教会でナチスに奪われたミケランジェロの聖母子像を見て「あのしょっぱな出てくる教会ってここか❗️」とびっくりしたり、そのあと訪れたゲントの聖バーフ教会にある至宝「神秘の子羊」もそうだと聞き、よく戻ってこられたものだと驚いたり感銘を受けたりしたものです。

このように教会の持ち物であれば出自も資料としてはっきり残っているので返還請求はしやすいのですが、個人の持ち物であった場合、裁判には気が遠くなるような時間と資金がかかることになります。実際、大作ではないが特別な思いを持って全財産を投げうち絵画の返還請求をした方もいると。そこにはどんな強い想いが存在するのかは想像に難くない。

ナチスに嵌められたユダヤ人画商、一個人の家から没収された絵画、由緒正しい家宝としてお城で公開されていたもの…出てくればまだ手の打ちようもあるかも知れないが行方不明になってしまってはますます取り返す手段も少なくなってきます。ましてやそれが美術館の所蔵品になっていたりすると大変です。

考えてみるに、美術館には収奪品が普通に存在しています。大英博物館のはアッシリアの城の壁画彫刻やエジプトのミイラ、ギリシャの神殿から切って持ってきた像などの美術品が山ほどありましたが、返還したという話はついぞ聞いたことがありません。(揉めてるという話は聞いたことがありますが。)

その他、戦争で戦利品として持ち帰ったものもたくさん他美術館は所蔵していますね。要するに、美術品はきわめて政治的なものであって、歴史が勝者のものであるように長い歴史の中で美術品も同じように扱われてきたのです。大昔は戦勝時の掠奪は正当な行為だった時もありますしね。と考えると、ヒトラーは敗者なので叩きやすいところを叩いているように思えます(ヒトラーの卑劣な行為を肯定するわけではありません。あと、数多すぎ❗️)。

王族のミイラを船に乗せてイギリスへ持ち帰る際、その船をエジプトの人々が着ている服を憤怒で引き裂きながら泣いて追いかけたという話もあります。私達日本人で考えると、皇族の墓を暴かれ遺骨や副葬品を持ち帰られたと同じです。立場も違え、人種も国も全く違うところで起こった、いえ、ずっと前から繰り返されている誇りをかけたこの問題は、これからも何処でだって起こり得るのです。