散歩好き

井の頭公園で犬とまったり。

ガラスの城の約束

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アップリンク吉祥寺で「ガラスの城の約束」を観てきました。キャプテン・マーベルブリー・ラーソンの、デコッパチと気の強そうなところがこの映画のヒロインにぴったりすぎる。

ブランドで身を固めた人気コラムニストジャネット(ブリー・ラーソン)は金融コンサルの婚約者とニューヨークの高級マンションに住んでいる。彼の顧客との高級レストランでの夕食会の後、タクシーで帰宅中の彼女が見たものは、ごみあさりをしていたホームレスの両親だった…

子供の頃は世界のすべてで、社会的にどうだとか一切関係なくひたすら愛すべき、尊敬すべき人物、それが親。しかし自立する年頃になってくると少しずつ現実がわかってきて、親を客観的に見つめるようになります。そこで彼女が見た現実は、子供時代に見た父とは違うものでした。

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親とは子供に理想を押し付けてしまうものですが、これはすごい。これでもか、これでもかと子供の過酷な生活を見せつけられるつらさは、父親のファンタジックな面を見ても消化できないほどです。それだけマイナスが大きい育ち方をしていながら、父の死を前にして(やっぱ死って究極のカタルシスなのだろうか)セレブ生活をぶち壊してでも心の底から自分の求めるものとは何かを追求したうえで父を許す彼女は、ほかでもないその軽蔑していた父親に育てられた人間であるのです。

父が「いよいよガラスの城を建てるぞ❗」と子供たちに掘らせた基礎には、年月を経るごとにゴミが捨てられ溜まっていきます。政治学を先行しジャーナリストになろうとしていたジャネットは芸能コラムニストとなり、彼女の文才もあってか成功をおさめますが、そのジャーナリストになる夢の残骸は、苦労して奨学金を受けて入った大学などの彼女の努力で掘った自分の基礎となる部分に捨てられ、全く違う景色になってしまった庭のようでした。

確かに子供の頃悲惨な生活をしていた。しかし、悲惨な思いをさせた飲んだくれの父が実はジャネットの独立心旺盛で知的な部分を育てていたのは確かなのだ。過去に囚われ自分の思っていた自分でないものになっているより、過去を開放してなりたい自分になる。そして彼女は「私って恵まれているな…」と独り言ちる…

映画で観るジャネットと両親はうまいこときれいに収まりましたが、エンドロールで実際の映像が流れると、ハッと現実に引き戻されます。やっぱり事実はすごすぎる、この状態から自分の夢をかなえるというのは並大抵のことではありません。原作を描いたジャネットの勇気と意思に心からの尊敬をささげます。