散歩好き

井の頭公園で犬とまったり。

天才作家の妻–40年目の真実−

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アップリンク吉祥寺で「天才作家の妻−40年目の真実−」を観てきました。シアター4は黒と木を使った都会的な感じでしたd(*´▽`*)b ベリーグッ♪

グレン・クローズゴールデングローブ主演女優賞受賞おめでとう(´∀`ノノ'`゜チ'`゜チ
相変わらずすごい演技派だなー。あの目が怖いよ、目が。にこやかに笑ってるけど目が笑ってない演技、黙ってるけど目で非難する演技、燃え盛る怒りを目だけで表現する演技。本当に素晴らしい。受けて立つダンナのジョナサン・プライスの子供っぽい自然な雰囲気が毒の効いたクローズの演技と混ざっていい味出してますよね。

アメリ現代文学の巨匠ジョセフ(ジョナサン・プライス)の元にノーベル賞受賞の知らせが届く。しかし妻ジョーン(グレン・クローズ)は困惑している。何故ならこの夫婦にはとてつもない秘密があったからだ…

っちゅうのが宣伝の文句ですが、ここまででじゅうぶんにネタバレしているということは、肝心なのはここじゃないよ、って事なんですね。この後そのネタバレについてなので、グレン・クローズの素晴らしい演技を映画館で堪能してから読んでください。

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うふふ、ほーら怖い。
要するに奥さんはダンナのゴーストライターなのです。その文章でノーベル賞取っちゃったもんで、アイデンティティが崩壊しかかっているのに、ダンナは共同執筆だと思っているのでノー天気に喜んでんのがまたカンに触る。だいたいお前浮気を繰り返すわ、脱いだ服ほっぽらかしだわ、一体何様だーーーーー‼️授賞式がなんぼのもんじゃい、帰国して離婚じゃーーーーーー‼️と大爆発!わかりみが深すぎる。

しかしながら、このような鬱屈について思う時いつも思い起こすシーンがあります。それは映画ではなく、源氏物語を漫画化した大和和紀作「あさきゆめみし」のクライマックスシーン、紫の上が亡くなる場面です。

源氏の君の愛情は自分にではなく誰かの(藤壺)身代わりとしてであり、唯一支えにしていた正妻の座はあっさり子供のような女二宮に奪われ、思えば自分の身分は正妻腹ではなく、いつともなく妻になったのであった。殿は私のことをこんなに軽んじていたのであったか…と絶望の淵に立たされ、体調も悪く、この上は出家して悩みから解き放たれ心静かに暮らしたいと思うのに、源氏の君が出家を許さない。

そして最後の時が来て、紫の上のモノローグ。

「どうして出家したいと思ったのかしら。どうして別れたいと思ったのかしら。あなたがいたからわたくしは生きていたのに。生まれ変わったらまたあなたと一緒にいたいと…」

全てのことを排除し、どうして一緒にいるのかをシンプルに自分に問うた時、そこに残るのは愛があるかどうかだ。ジョーンがジョセフの死に対峙した時、やはりそこには愛しているというシンプルな事実があった。

普段私たちは愛という存在を無視して生きている。しかしパートナーとの今生の別れに際し、皿洗いをしなかったとか、靴下がいつも裏返しで洗濯籠に入れてあったとかを思い出すだろうか。(すべて終わった後で色々思い出して遺影にデコピンくらいはするかもしれない。)そして思うのだ。いい人だった、と。だからいい人にふさわしい伝説を大切に守らなければならない。

妙にすっきりした表情のジョーンはいままでのわだかまりはどこへやら、またもや良妻賢母に戻る。これがジョセフの望んだ道、私の望んだ道でもあるのだ。