散歩好き

井の頭公園で犬とまったり。

ヤコブへの手紙 ☆☆☆☆☆

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銀座テアトルシネマで「ヤコブへの手紙」を観てきました。

ヒロインは見た通りデブのオバサン、ヒーローは年老いて忘れられた牧師様。どう考えてもハリウッドでは作りようがない設定ですが、これがまた素晴らしい映画でした。

囚人のレイラは恩赦でヤコブ牧師の家に住み、目の不自由な牧師の大事な仕事である、相談者からの手紙を音読し、返事を代書するという仕事に就く。すべてに捨て鉢になっているレイラは自分がここにいる意味が見いだせず、近隣の人々の偏見にも辟易しここを出ていくことを考えるが・・・

美しい表紙で愛すべき文章が載っている本を何度も何度も思い出しては繰り返し読むような、そんな映画です。

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手紙が実はヤコブ牧師に助けを求めるだけのものではなく、ヤコブ牧師にとって自分が牧師であるよりどころになっていたということに、牧師自身が気づくシーン。残酷です。歳をとって人々に忘れられているという恐ろしい現実を、気づかないようにしていたけれど突きつけられた時の牧師の絶望…同じ絶望感を抱いて生きてきたレイラはその時初めて牧師に共感し、「この人をなんとかしてあげたい」と思うようになる過程が胸に沁みます。

そして彼女自身をここに結びつけたものがその時明らかになり、同時に彼女の押さえつけてきた愛情が明らかになるとき、ちゃちな表現ですが静かな感動で胸がいっぱいになりました。これでしか表現できない。

本当に沁みる映画です。ぜひ劇場で観てください。