散歩好き

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ゲティ家の身代金

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TOHOシネマズ日比谷で「ゲティ家の身代金」を観てきました。もうすぐ公開が終わっちゃうし、せっかく今日は夜ここで映画を観る予定なのでダブルヘッダーで観ることにしましたが、隣のお兄さんがapplewatchでメールチェックしてる上(シアターモードっていう便利な機能があるのよ、って教えてやろうかと思ったくらい)セブンイレブンから買い込んだパンをこれは食事だね、ってくらいむしゃむしゃバリバリ食べていてうるさいし、上映後椅子の下に袋が散乱しているのに唖然。腕を組んでジーーーーーーーーーーーーーッとゴミを凝視していたら、さっさと片して出ていきました。こんなところで映画を観ていずに外でメールチェックしながら食事してたらよかったのでは?

ジョン・ポール・ゲティ(クリストファー・プラマー)は総資産1.4億円、世界一の大金持ちだが、誘拐された孫ポールの身代金は払わない。母ゲイル(ミシェル・ウィリアムズ)はゲティ家の嫁だがゲティの息子と離婚しているためお金はない。そのうち誘拐犯は…

というあらすじのような宣伝がされたため、どうしてもゲティ氏の吝嗇ばかりがクローズアップされてしまいますが、実際に観てみるとそうではなく、哀しいおじいちゃんの話でした。

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ケヴィン・スペイシーが14歳の俳優に性的虐待をしたため当初はお蔵入りの噂さえありましたが、リドリー・スコット監督はキャストをクリストファー・ブラマーに変更し2週間で撮り直して公開にこぎつけたことばかりがニュースとして取りあげられてしまいましたが、サスペンスとして本当に面白く、ドキドキして観ましたよ。クリストファー・プラマーは「サウンドオブミュージック」のトラップ大佐としてあまりにも有名ですが、お年を召してからカミングアウトする作品やこの作品に出演してより一層役者としての幅を広げている素晴らしい役者です。

監督は当初からブラマーを起用するつもりだったらしいのですが、もっとこの作品の商品価値を上げるため映画会社がケヴィン・スペイシーをキャスティングしたということ。うん、スペイシーならもっとゲスでギラギラした、もっとシェイクスピアっぽく盛り上げまくるおじいちゃんだったでしょうね。正直映画ファンとしては両方観たかったなあ…ケヴィンのバカ…

でもだいたいにおいて第一印象というのは変わらないもので、監督の思惑通りブラマー氏によるゲティは静かで、吝嗇が身についていて、生まれた時からゲティのようなイメージに仕上がっています。

ゲティのこだわったボッティチェリの母子像。孫が誘拐されててもこれにはお金を惜しまない彼を「人でなし」とつまはじきするのはたやすいことですが、彼の欲している母性や、肉親からの愛への渇望がしみじみと伝わります。お金持ちであるゆえにただ単純に愛されることが出来なかった彼。ジョン・ポール・ゲティ三世と名付けられ彼の跡継ぎとしてすべてを教え込みたかった孫に裏切られたことを知ったときの衝撃は強い怒りとなって「もう人間など信じない」という確固たる信念となってしまいました。

だからゲイルの母としての行動をゲティは理解できないので、何か裏があるんじゃないかと勘繰る彼の哀しさ。人生の最後においても母子像を眺める彼を、ケチジジイと誰がとがめられるでしょうか。おじいちゃんだけど「大丈夫だよ」とそっと頭を抱いてあげたい気分になりました。クリストファー・プラマー恐るべし。

ゲイルはローマに住んでいる設定なので、ローマのステキな場所が次々に映ります。()コロッセオやナボーナ広場のベルニーニの噴水、カピトリーノ美術館、そこから見えるフォロロマーノ…ああ、暑い中5万歩も歩き回ってよかった。これほとんど1日で見て回ってますからね。またローマ行きたくなりました(今度はぜひ涼しい時にね)。

それからポール三世を演じたチャーリー・プラマー。プラマーって別に二人は親戚というわけじゃないのかね。彼は走って逃げる際にゼイゼイヒューヒュー呼吸をしているのですよ。意外とみんな「あんた一体どんだけ走れるんだい?」てくらい映画で走るわけですが、ホントに命がけで急いで走って逃げたらこういう感じでしょ?さすが新スパイダーマンの主役オーディションの最後の6人に残っただけある演技力ですなあ。彼にも今後注目です。