散歩好き

井の頭公園で犬とまったり。

潜水服は蝶の夢を見る

1 大泉OZで「潜水服は蝶の夢を見る」を観てきました。うちのめされるとはこういう感情のことをいうのでしょうか。でも気持ちいいKO・・・

教養アリ・イケメン・センス・モテモテ・仕事スゲエ。ひとつだって達成するのはたいへんなのに、これ全部持ってる信じられないオトコ、ジャン=ドミニク・ボビー通称ジャン=ドー。

だって「ELLE」の編集長だよ?モテないはずないよ。子供が3人いるけど結婚はしてないの。それがなにか?

そんな神をも恐れぬ時代の寵児はある日突然脳梗塞をおこし、自分自身の中に閉じ込められてしまいます。

2 なんでフランスの療法士さんはみんな美人なんだ?という疑問よりも、医師の「2人療法士がきます。美人ですよ」というセリフ。日本ではありえない。セクハラとか言われちゃいそうです。でも、その辺フランス人はオトナね[E:kissmark]

このカードは閉じ込められたジャンと会話する唯一の方法。単語で使う頻度の高い順になっていて、使いたい文字を口にしたらジャンが瞬きすると、それを書き留めておき、文章にしていくという気の遠くなる作業です。

やめたくてもやめたいって言えないし、イライラしても何かにあたる方法すらありません。テレビのチャンネルだって、アルファベットを読んでくれる人がいないと、換えてとすら伝えられない。

4 初めはこの映画は恐怖映画のように感じました。すべてを持っていた自分が気がついたら身体がすべてマヒしていて、容貌がすっかり変わっている。右目はまぶたがマヒしていたため医師に縫い付けられてしまいます。口は曲がっているのでよだれ。舌もマヒしているので食べられない。そして一番恐ろしいのが、自分がそのような状態にあるというのを自覚できるということ。

そしてしばらくして、彼は思いもよらない決断を下します。「もう自分を哀れむのはやめた。」自分の想像力と記憶で、どこでも行けるし何でもできると!たとえばこの時点で私であれば脳内メーカー状に表現すれば文句と自分への哀れみと運命を呪う言葉で満載、字が通常より小さくなるところですが、やはり彼は一味違う。大きく針がブレながらもシニカルでユーモアのある自分を少しずつとりもどしていきます。

3 何度も言うけど彼はホントにすごい。こんな状況にありながら女の人のモモばっか見てるし、子供達の母親に通訳させて愛人に「毎日君を待ってる」と殺し文句を吐いたりします。そして気の遠くなるような作業の末、本を書き上げ、なんと声らしきものを発せられるところまでこぎつけます。

ここまできて、初めはただ恐ろしかった感情は消え、彼への愛情を感じ始めます。完璧に彼のペースに飲まれてしまった気分です。カメラワークが彼の目線で進行するせいでしょうか。

そしてこのカキを食べるシーン。「ラスト、コ-ション」よりエロを感じました。食べ、くどき、美味しいワイン、そしてキス。フランス人の生きる糧ですね。ラストも少なくともハッピーエンドではないのですが、気分が悪くなるものではない。むしろカタストロフを感じます。美しい夢を見たような・・・