散歩好き

井の頭公園で犬とまったり。

アーニャはきっと来る

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アップリンク吉祥寺で「アーニャは、きっと来る」を観てきました。

コロナの影響で映画の公開が延期になったりし始めてから初めて、この映画が観たくて公開を待って映画館に行くという行動をしたような気がします。

cinerack.jp

なんといっても主演が「ストレンジャー・シングス」のノア・シュナップ、超注目株の16歳。若い子はあっという間に見た目が変わるから、今最も目が離せない人と言えましょう。 あと「アンブレラ・アカデミー」のエイダン・ギャラガーね。

南フランスを舞台にした「ユダヤ人を救った少年の物語」とありますが、文字通り予想外の展開があっていい意味で裏切られ、謳い文句に踊らされたなあと唸ってしまいました。

以下はっきりとは書かないけどネタバレを含みます。

 

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祖父役にジャン・レノ…もうおじいちゃん役なのかあ…でもすごくフランスのおじいちゃんって感じが出てて(当たり前か、彼もうフランス人のおじいちゃんだもんね)ピリッとスパイス効かせて&笑いを振りまいてました。

びっくりしたのが「アダムス・ファミリー」のモーティシア夫人、アンジェリカ・ヒューストンが頑固ババアの役で全然アメリカ人に見えない。というように、芸達者が丁寧に作った良作なのですよ。

結末も「めでたし、めでたし」で終わるんじゃなくて、不安と希望とをないまぜにした御伽噺ではない事実を元にした話としてきちんと終わっています。現実っていいことばかりじゃないんだもんね…

ナチスの物語として描かれるとき、往々にしてナチスを全員冷たい表情の人でなしとする場合が多い。この方が簡単だし世間の批判も受けにくいのでしょうがそれでは物語として薄っぺらいし、想像の余地がなくなります。劇中の伍長がその役を一気に引き受けていて、ナチスとして人を処刑しつつも苦悩する人間の弱さ、悩み、悲しみ、諦観などを見事に演じていてまるで宗教映画を観ているようでした。それは同時に人を救いたいと奮闘する羊飼いの少年の心と見事にリンクして、ひとつの奇跡を起こすことになります。

主人公が羊飼いというのも聖書を少しでも知っている人ならピンとくる部分ではあります。有名なヨハネ福音書の中の「良い羊飼い」の話を連想するからです。


12 羊飼いでなく、自分の羊を持たない雇い人は、狼が来るのを見ると、羊を置き去りにして逃げる。―狼は羊を奪い、また追い散らす。
13 彼は雇い人で、羊のことを心にかけていないからである。
14 わたしは良い羊飼いである。 わたしは自分の羊を知っており、羊もわたしを知っている。
15 それは、父がわたしを知っておられ、 わたしが父を知っているのと同じである。わたしは羊のために命を捨てる。
16 わたしには、この囲い に入っていないほかの羊もいる。その羊をも導かなければならない。その羊もわたしの声を聞き分ける。こうして、羊は一人の羊飼いに導かれ、一つの群れになる。
17 わたしは命を、再び受けるために、 捨てる。それゆえ、父はわたしを愛してくださる。
18 だれもわたしから命を奪い取ることはできない。 わたしは自分でそれを捨てる。わたしは命を捨てることもでき、それを再び受けることもできる。これは、わたしが父から受けた掟である。

 

映画の冒頭主人公が羊の放牧中に熊に遭遇したエピソードはまさにこれであり、この時は羊と犬をほったらかしにして逃げた羊飼いは、ベンジャミンとレアというユダヤ人との出会いにより他人事として考えられなくなり「よい羊飼い」となり、「羊は一人の羊飼いに導かれ、一つの群れにな」り、全体としては小さくとも、大いなる使命を遂げたのです。

冒頭ナレーションでは後日の本人として「私はこのことで大人になった」と語っています。私は歳だけは重ねておばさんになったけれど、大人になっただろうか…

以前「少女ファニーと運命の旅」という映画を観たときにも思いましたが、なすべきことをなす必要があってそれがすごく勇気のいる行為だとしても、どんな小さなことでもいいからなすべきことをしよう。それがどんなに小さいことでも、私の生きた証になるはずです。

少女ファニーと運命の旅 - 散歩好き