散歩好き

井の頭公園で犬とまったり。

神々と男たち ☆☆☆☆

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シネスイッチ銀座で「神々と男たち」を観てきました。なぜここの金曜日のレディスデーは900円なのであろうか。なぜ1000円ではないのか。うーむ。聴けばよかった。

アルジェリアにある厳律シトー派(トラピスト会)の小さな教会に8人のフランス人修道士がイスラム教地域と溶け込み静かな祈りの日々を続けていたが、1996年イスラム原理主義組織による外国人殺害が起こり、彼らの生命も脅かされる・・・実話に基づく映画です。

トラピスト会と言うと北海道のバタークッキーやバター飴が有名で、私の学校とも交流があったので文化祭でよく買いました。そしてトラピスト会は布教の義務がないのでこういった違う宗教との共存が可能なのかと。そしてそれがこの映画のキモともなっています。

「最後の晩餐」を模したクライマックスシーンでチャイコフスキー白鳥の湖」の「情景」を流すのですが、これって勝手に深読みしてより一層感動してしまいましたが、なんてこたない監督の思いつきだそうですよ。なーんだ。

338143view002 ・・・というのも、コドモ用の白鳥の湖のラストは愛の力でオデットと王子が悪魔ロットバルトを打ち破りめでたしめでたし・・・なんですが、当初のストーリーは悪魔を打ち破ってもオデットの呪いが解けないため絶望した2人は湖に身を投げ天国で永遠の愛を成就させるというものなんです。いろんなパターンが上演されますが。

だからリュックが古いラジカセでこの音楽をかけた時、医師である彼はたぶんこの結末を知っていて、「自分を襲ったテロリストの親玉は死んでしまったが、テロリズムからの呪いが解けぬ(死の呪縛から逃れられない)修道士たちが殉教によって天国で永遠の城を建てる」と自分たちの運命をなぞらえたのかなと。そしてそのストーリーを知らないものは単に楽しい夕餉の一シーンなのであり、知っている者は涙をこらええず、ハッピーエンドだけを知っている者は楽観的将来を思い浮かべる・・・と勝手に解釈してしまった(;´д`)トホホ…まあ、私は自分の解釈で酔っていたいですけどね。

彼ら8人にはそれぞれ自分の死についての考えがあるわけで、それがだんだん一つにまとまっていく過程がとても静かで感動的です。上空をヘリコプターが飛び回り、ああ、ついに来たかと皆が覚悟するとき、8人が聖歌をうたいながら肩を組んだりして団結するシーンは思い出すだけで涙が出ます。圧倒的暴力に対して無力な者たちがそれに相対するときに抱き合って無言で励ます・・・今の私たちの、そして東北の人たちの姿と重なります。

これがハリウッドのだとブルース・ウィリスみたいな修道士が一人ならずいて、戦いつつ村人を守るとかいうストーリーになるんですかね。よかった、そうならなくて。この映画のメンタルは、「静かに受容する」日本人と共通するように思えます。そしてやはり宗教について(大部分の人たちが)寛容である私たちが理想とする異教徒同士の付き合い方を素朴に美しく描いています。美しい部分だけではなく、どうしてこのようなテロリズムが横行するのか、フランスの植民地であったアルジェリアの近代史について現地の人はどう思っているのか、また私も知りたかった一般の人がイスラム原理主義をどう思っているのかがさりげなく表現されています。ま、これだけがすべての意見の総括であるとは思いませんが、ぜひ映画館で観てください。