散歩好き

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英国王のスピーチ ☆☆☆☆☆

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TOHOシネマズ府中で「英国王のスピーチ」を観てきました。アカデミー作品賞受賞おめでとうございます!

こういう誰もが観られて(アメリカではR12だったか?)静かに感動でき、「ああ、いい映画だったね」と言いながらシアターを出られる映画がアカデミー賞を取るとなんだかほっとします。時々つらくて観られないのがあるので・・・ってがまんして観ろよって話ですね(;´д`)トホホ…つらい現実からもらう大切なものもあります。

吃音に悩むヨーク公アルバート(コリン・ファース)はいろいろな治療を受けるが、結果は芳しくない。ある日妻エリザベス(ヘレナ・ボナム・カーター)がみつけてきたローグ(ジェフリー・ラッシュ)というオーストラリア人の元へ出かけてみると、思いもよらなかった結果が・・・

程度の差はあれ誰にでもある「絶対できないんだけど絶対やらなきゃならない」という絶対絶命シーン。「俺はやるゼ!!!」とプレッシャーを前に燃え上がる人もいますが、アルバート王子の場合はプレッシャーで押しつぶされそうになるタイプでした。普通はそうですよね~。

それにしても実在の人物だったローグはオーストラリア人。これはジェフリー・ラッシュがやらなきゃだれがやる、ってことです。

338127view006 戦争と前後して王家が次々と消滅していきます。ロシアのロマノフ朝をはじめ、イタリアのサヴォイア家、オーストリアのハプスブルグ家、ドイツのフォーエンツォレルン家(大学の歴史学の授業でこの名前が出てくるとき、みんなミョーに発音をドイツ風にするのが流行ったもんだ)・・・その激動の中でイギリス王家もその危機から無縁ではなく、ヨーク公の父・ジョージ5世は王家の生き残りをかけて国民に支持されるべく決死の努力をしていたのでした。しかしその王太子デイビッド(エドワード8世)はその人気にも関わらずバツ2のアメリカ人女性ウォレス・シンプソン夫人とホンキの様子・・・

「王冠をかけた恋」といえば素晴らしいロマンスですが、実際にはシンプソン夫人の前夫は健在だし、現夫はロンドンにおり、愛人がいる。そして夫人にもエドワード8世以外にも恋人がいるといううわさもあり、さらに夫人にはナチスとの密かなつながりがあったらしく、この王室の危機に対し家族総出で戦わなければいけない時にはこの恋は立場上許されざるものでした。

さらにドイツとの関係も微妙であり、開戦は時間の問題とすれば、内閣と手を携え国民の士気を上げるのも王家としての大切な仕事なのです。

ヨーク公のままでいられればスピーチがへたくそでも生きていけますが、王となると話は別。王家と国家、両方をかけた一大事です。

しかし「しっかりしろ」でしっかりできれば苦労はない。大変な苦労をしつつ、自分の問題を解決しつつ少しずつヨーク公は吃音を直していきますが、この映画は克服の話だけではなく、並行して療法士ローグとの友情をも描いていきます。

コリン・ファースジェフリー・ラッシュがまた上手い!いつの間にかまるで2人の近くにいて話を聞いているような、親密な感情が湧いてきます。会話も軽妙で、緊張と緩和が本当に楽しい。

そしてクライマックス、極論すればスピーチしているだけのシーンですが、ものすごい緊張感。そしてふりまかれた少しの笑いがスパイスとなり、徐々に「上手くスピーチをすること」から脱却し「伝えるべき言葉がある」という使命にかられていく様子が素晴らしい感動を呼び起こします。スピーチの内容は内閣によって作られチェックされたものであるにも関わらず、ジョージ6世となったヨーク公の強い意志と熱情によってスピーチに命が吹き込まれたということでしょうか。これを演技でクリアしたコリン・ファースに手が痛くなるほど拍手を送りたいと思います。

アカデミー賞を取ったということで上映館も増えるんじゃないですか?見逃してはいけない!お近くの映画館へ今すぐGO!「ハリー・ポッター」シリーズの校長先生・マイケル・ガンボンがジョージ5世として出演していますが、肖像画にクリソツでびっくりしますよ。