TOHOシネマズ日比谷で「ザ・バットマン」を観てきました。
お得な水曜とはいえ平日、ガラガラと言っていい劇場なのに、ここが観やすい席だからか男性が隣に座り、なんだか居心地が悪い中本編スタート。なるほど、これが昨今話題のトナラーというやつか。たまにいるけど。
ふーむ、バットマンってばあんなにハイテク機器を身につけながらも、日誌はノートに筆記体で書いているのね。興味深い。
スーパーイントロ当てクイズでもわかるほど有名なシューベルトの「アヴェマリア」。意外なことにこの曲は讃美歌などではなく、古い物語の中で「どうか囚われたお父様をお助け下さい」と父の無事をマリア様に祈る乙女のセリフにシューベルトが曲を付けたもの。冒頭では祈りも虚しく少年の父は亡くなってしまいますが…
そして重々しいピアノ曲は、ショパンの葬送行進曲にも似た憂鬱なリズムをゆっくりと奏で、暗い画面を一層暗くします。そして闇の中から滲み出るように現れる陰鬱なバットマン…まるで生きることを呪っているかのよう。
自分の出自を知り、自分が何者であるか、なぜこのような自分になったのかを知らない人は自分を愛すことが難しい。これを突きつめていくことと、キャットウーマンとの巡り合いで彼は変化していきます。
編み上げブーツでキャットウォークのキャットウーマンは自分の復讐を実行する事でバットマンに無意識のうちに復讐の虚しさを教え、復讐を超えたところに何があるのかを理解させます。
発煙筒を持ち人々を誘導するバットマンはドラクロワ描くところの「民衆を導く自由の女神」そっくりで、彼のこれから…悪い奴らを懲らしめることよりも民衆を率いて良い方角へ向かい戦っていく姿勢を現すようでした。
ずっとゴッサムシティに降り続いていた陰鬱な雨もいつしか止み、晴れ間が見えようとしている時、恋人は街から出て行きます。違う道にそれぞれ出発していく2人の幸先はとりあえず祝福されているようです…が、さっそく第2作の予感。バットマンの平穏は長くは続きそうにはありません。