散歩好き

井の頭公園で犬とまったり。

善き人 ☆☆☆☆

341252view004 有楽町スバル座「善き人」を観てきました。この映画はスバル座でしかやってないので初めて訪れました。古い時代の映画館というカンジで、ビロードのカーテンが恭しくかかり、売店は箱のポテトスティックが置かれ、座席に段差はほとんどなく、観客のほとんどはおじいちゃんおばあちゃんで、映画が始まる前に学校のチャイムが鳴り響く。子供のころに「ガメラ」を観た映画館にタイムスリップしたかと思った・・・けど、ロイヤルのアイスモナカを場内で売り子さんが売ってくれないと福岡の映画館とは言えないな。当時100円。今考えたら高いアイスだなあ~。

1930年代。ベルリンにある大学の教授ジョン(ヴィゴ・モーテンセン)は家事を放棄した妻に代わり家事に忙殺され、年老いてすこしぼけてきた老母の面倒を見、子供たちの宿題をみる善き家庭人でもあったが、自分の描いた小説をヒトラーが見初め、入党を条件にナチスの人道的アドバイザー(こんなんがあるのか!)として出世の道を歩むことになるが・・・

第一次世界大戦でも「たいした戦いはしなかった」という超文系オフランス系教授が愛人の前で服を脱ぐと腹筋バリバリの仮面ライダーも逃げ出すようなすごいカラダ。ヴィゴ、超演技派なのにツメが甘いよ?・・・というどうでもいいツッコミは置いといて、この映画、こわいです。

普通の「いいひと」がどんどん周りに流されて行って、行きついたところは本来の自分とはかけ離れた遠い所だった。母を捨て、妻を捨て、美しい妻は虚構、ユダヤ人の親友は(この人、マルフォイのお父さん)・・・本人はその場その場でこれしかないと思われる行動をとっているだけなのに?でも戦時中は普通のこと。距離を置けばわかることでも、激流の中で浮いている身には抗うすべはありません。だから恐ろしい。

本人の意識と現実のひずみで生まれる音楽シーンは、脳が揺さぶられるような幻想的かつホラーなもので、「これは現実なのか?」とつぶやくヴィゴの追い詰められて不安定になった精神状況が素晴らしく表現されていたと思います。ラストは切り取られるようにバシッと終わりますが、かえって衝撃を受け立ち上がれません。

ヴィゴの出る映画って、ハズレがない。ヴィゴを探して観に行こう。